中国最大級のOTA、Ctrip(シートリップ)が、国慶節期間中の中国人旅行者の旅行先人気ランキングを発表した。昨年1位のタイを破り、今回日本が初めて人気旅行先首位を勝ち取った。9月には、台風21号や北海道の地震といった観光業界にとっても厳しい状況が続いたのにもかかわらず、この快挙を達成したのはなぜだろうか。
Ctripの分析によれば、日本人気の内的な要因としては、日中関係の改善や、北海道の地震や関西国際空港の被害が限定的なものだったことが指摘されている。また、関西や北海道以外の代替となる観光資源が豊富なこと、さらにはビザ緩和なども要因として挙げられる。外的要因としては、タイでは7月に中国人を乗せたボートの転落事故が発生したことで安全面の不信が高まったこと、そして韓国ではTHAAD配備問題に関連し、韓国行きの旅行商品の販売を中止する「禁韓令」が開始されたことがあり、ライバルとなる国への旅行需要が落ち込んだことが後押しとなった模様だ。
今回の台風21号や北海道の地震で国慶節需要が大きく減退しなかった理由は他にもある。それはSNSの存在だ。在日の中国人KOL(キー・オピニオン・リーダー)など、実際に被災地にいた中国人SNSユーザーらが、現地の様子と被災からの復興の速さを、写真やライブ中継を交えて投稿した。この影響力はすさまじく、これにより訪日旅行を控えていた中国人旅行者たちに安心感を与え、国慶節需要への大ダメージを防いだものとみられる。
今年の国慶節需要トレンドから見えたことは、災害の多い日本が、インバウンドビジネスを持続可能なものにしていくために何が大事であるかだ。すなわち、風評被害を防ぐような適切な情報発信や、実際に被災してしまった訪日外国人に、いかに適切な対応をとれるかだ。ラグビーW杯、東京五輪、そしてポスト五輪の期間、災害が全く起こらない可能性はほとんどゼロに近いだろう。だからこそ、今からインバウンドを意識した災害時対応を考えなければならない。